そう思うと、どんなに正しいことを言っていたとしても、説得力がないですよね。100%以上の力を出して、命がけでやっている的なことを言っているのだから、なおさらです。
福岡国際センターのボルテージが一気に高まった。1995年大相撲九州場所千秋楽。12勝で優勝争いのトップを走っていた横綱・貴乃花と大関・若乃花はそろって敗れ3敗目。史上初の兄弟優勝決定戦が実現した。異様な雰囲気の中、仕切り線をはさんだ2人は視線を合わそうとしない。右四つから最後は下手投げ。2度目の優勝を決めた兄は、土がついた弟にそっと手を差しのべた。
取組後、貴乃花は「もう1回やりたいかって? イヤですよ」と話している。花田は相撲を仕事という言葉に例え、当時を振り返った。「やりたくなかったですよ。仲がよかったですから。兄弟げんかはできますよ。でも、仕事は関係ありません。与えられた仕事でしたから、つらかったですよ」。これが最初で最後の若貴兄弟の対戦となった。88年春場所で初土俵を踏んだ2人はこの数年後、相撲観の違いなどから距離を置くことになる。「何であれ人の考え方ですし、(自分はやることを)まっとうできたわけですから」。現在も連絡は取り合っていない。