不気味だけど、とても奥の深い話。この話はインスパイアせずにそのまま使えます。長女はかなり盛り上がっていました。
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もともとの話のストーリーを以下に引用。
舞台は今から数百年前の飢饉に苦しむ日本。 長い長い雨が止み、やっと晴れ間が覗いたその日。 山村の寂れた寺の住職が外へ出てみると、周りは長雨のせいで酷く荒れていた。 「また飢饉に拍車がかかる…」 そう言って住職は嘆く。 ふと横を見るとこの長雨にやられたのか、水たまりにたくさんの生き物の死骸が浮いている。 「かわいそうに……」 死んでしまった生き物のために読経する住職。 お経を上げるかたわら、住職のそばから一匹の美しい蝶々が飛びたった。 この長雨の中、なんとか生き残ったのだろう。
と、突然飛び上がった蝶々が中空でもがき始める。 不思議に思ってよく見ると、蝶々は蜘蛛の巣に引っ掛かってしまっていた。 蜘蛛はすぐに蝶々に襲いかかろうとする。 咄嗟に巣を払い、蝶々を助ける住職。 せっかくの長雨を生き残った蝶々を死なせるのはしのびない。 住職は助かった蝶々に「気をつけなされよ」と一声かけ、空に放してやった。 飛び去って行く蝶々を見送り、満足そうに帰ろうとする住職。
と、その時、住職の頭の中に声が響いてきた。
不思議な事に蜘蛛が語りかけてきたのだ。
「お待ちよ、お坊さん…
私しゃさあ……昨日までの長雨で……一月も前からエサを口にしてないんだ…
あんたが仏心で蝶々を助けたことは……私にゃあ、死を意味するんだよ!」
蜘蛛は糾弾するかのようにゆっくりと住職に歩み寄る。
蜘蛛が住職の肩口に登ろうとしたその刹那、
突然飛んできたモズが蜘蛛をくわえて飛んでいってしまった。
蜘蛛は焦って叫ぶ。
「お坊さん、私を助けておくれ!
早く!早く!!」
すぐに石を拾い上げ助けようとする住職。
しかし住職は持ち上げた石を投げることなく、ちからなく地面に落としてしまう。
モズは枝に止まりさっそく蜘蛛を引き裂いて食べ始めた。
「許せ女郎蜘蛛よ……今は……全ての生き物が飢えておる時………
もしかしたらそのモズも……一月も前からエサを口にしてないのかもしれないのじゃ…」
そう言って住職は蜘蛛とモズに背を向ける。と、またも悲鳴が響き渡る。
今度の悲鳴は間違い無く人の悲鳴、それも幼子の悲鳴。
慌てて悲鳴の方向に行くと、今まさに幼い子供が野犬に襲われているところだった。
「だっ、誰か助けて~!」
住職は今度は躊躇せず助けに入る。
間一髪で野犬から子供を救い出す住職。
しかしまだ野犬はうなり声を上げ向きなおってくる。
すると、またも住職の頭の中に声が響いてきた。
声は向き合ってる野犬の声だ。
『ガキをよこしな』
「!?」
『ガキをよこせと言ってるんだ……俺はこの一月ほとんどエサを食ってないんだ
生きるために俺にはそのガキが必要なんだ、おとなしくガキをよこせ』
「ば…馬鹿を申せ!!」
『何が馬鹿だ…そのガキは飢饉のせいで口減らしに捨てられた子供だ
俺が食わなくてもどうせ飢え死にするんだ…さあ、よこせ』
「こっ……断る!!」
『……何?』
「ワシは人間じゃ…仏に仕える身じゃ!
そのような薄情なことはできぬわ!!」
その途端、別の方向から『別の声』が住職の頭の中に響いてきた。
さっき聞いた、あの蜘蛛の声だ。『薄情なことのできない人間が何故私を見捨てたのさ…』
「!?」
『蝶々や子供は助けるくせに何故私は見殺しにしたのさ…』
「そ…それは……」
蜘蛛が住職に問い掛ける。
そして住職が答えに窮したその時、隙をついて野犬が子供に食らいついた。
「たっ、助けて~~」
住職は慌てて助けに向かう。
しかし助けようとする住職にまたも蜘蛛は語りかけてくる。
『助ける気かい、お坊さん?
…子供はかわいいから助ける気になったかい?
…蝶々は美しいから助けたのかい?
……私は醜いから平気で見殺しにしたのかい!?』
「ちっ、違う!」
『じゃあ黙って犬に食わしておやりよ』住職の手が止まりかける。
しかし、助けを求める子供の姿を見て、堪えきれずに助けに向かって行く。
「あっ…あの時はあの時……
やはりワシには見殺しにはできぬワ!!」
『……やっぱり私は醜いから見捨てたんだね』
「ちっ…違う!
蝶々を助けたのは仏心じゃ!弱きを助けるのは自然の心じゃろうが!」
『勝手をぬかすんじゃないよ!
…私はモズより強いのか!
…私のような小さな蜘蛛が大きなモズより強いのか!!』
「……だ…だから許せと申したのじゃ」
『ふざけるんじゃないよ!!』
蜘蛛の怒りの叫びと同時に住職は得体の知れない力で動けなくなる。
『…殺してやる』
蜘蛛の怒りが野犬に伝わっていく。
住職は何故か動くことができない。
『差別された者の恨み、思い知らせてやる!!』
動けない住職に、一太刀、また一太刀と野犬が牙を浴びせかける。
そして、あと一撃!!…というところで突然、住職は助かるのだった。近くを偶然通りかかった村人が襲われている住職を見て助けに入り、野犬を殴り殺したのだ。
ギリギリの所で助かり安堵する住職。
ふと、気づくとさっきの子供が見えない。
慌てて助けてくれた村人に聞いてみたが、知らないと言う。
「そこにはさっきから、えらくでかい女郎蜘蛛がいるだけだよ」
見ると確かに子供の居た場所には大きな女郎蜘蛛が居るだけだった。
「なっ、なんと……」
女郎蜘蛛は糸を伝って巣に戻り、巣にかかったばかりのセミへと向かう。
セミは巣にかかったばかりらしく、まだ声を上げ暴れている。
それを見た村人が住職に尋ねた。
「こういう時……住職はどうなさるのかいのう?
オラは見て見ぬふりだけど……少し薄情かいのう?」
「……薄情なものか
さあ、悪いが寺まで送ってくれぬか…」
住職は巣を振りかえる事もなく戻っていく。
やがて、セミの声も届かなった(終 わ り)
もともと仏教に似た話があるらしいです。
ある僧が旅をしていると、蛇に捕らえられた一匹の雀がいた。
助けを乞う雀を不憫に思った僧は、自らの肉と交換に雀を解放してやるよう頼む。
蛇はその交渉を呑む代わりにこの天秤を使えと不思議な天秤を渡す。
曰く、この天秤は相対的な量を測るものではなく、
自然のことわりによって定められた絶対的な量を測るものらしい。
僧は訝りながらも仕方なくその天秤を受け取り、自分の腕の肉を削ぎ落とすと、天秤の片方に乗せた。
もう片方に雀を乗せるが全く動く気配はない。
削ぎ落としても、削ぎ落としても、やはり天秤は動かない。
遂には片腕を失ってしまっても天秤が動くことはなかった。
おかしく思った僧が自らその天秤の上に乗ると、天秤はようやく釣り合ったという。
「どうだ、驚いたか」蛇が僧を睨み付けた。たまげて何も言えない僧に蛇は続ける。
「命に軽重など存在しないのだ。
自分の命も犠牲に出来ない者が弱いものを助けようなぞ、
それこそおこがましく、愚かなことよ」