- 2013/11/24
シンプルモダンを目指すこたつ、黒か白かで悩み中。どっちがいいんでしょうね。
最有力候補のVADIT。黒にするか、白にするか、悩ましいところです。前のこたつは誰ももらってくれない……
のび太の結婚前夜が、泣ける。
実は、引用されているだけで、筆者の言いたいところは別にあるんですが、そんなの霞んでしまうほどの、素晴らしいくだりなので、そこだけ引用です。
そして迎えた当日。指名を受けると私はマイクの前に立ち、話し始めた。
「島田くんの中学時代からの友人で桃野と申します。今日は新郎の友人代表ということで、お話をさせて頂きます」
…案の定、既に酒が一巡している会場は乱痴気騒ぎである。誰一人、私の話を聞いていない。
「正直私は余り、スピーチが上手ではありません。そのため今から、あるマンガの名シーンを朗読します。宜しければしばし、お付き合いください」
そして新婦側の両親の席に向き直ると、1冊の漫画本をポケットから取り出し、読み上げ始めた。
「パパ!あたし、およめに行くのやめる!!」
騒がしかった会場が一瞬で、嘘のように静まり返った。100名近い出席者の目が全て、私に注がれるのを感じた。
しかしもう、やり始めてしまったことである。私は構わず続けた。
「わたしが行っちゃったらパパ寂しくなるでしょ?これまでずっと甘えたりわがままいったり…。
それなのに私のほうは、パパやママになんにもしてあげられなかった」「とんでもない、君はぼくらに素晴らしいおくり物を残していってくれるんだよ」
「おくり物?私が?」
「そう、数えきれない…ほどのね。最初のおくり物は、君が生まれてきてくれたことだ。午前三時ごろだったよ。君の産声が天使のラッパみたいに聞こえた。あんなに楽しい音楽はきいたことがない」
ここまで来たら出席者の誰もが、私が読み上げているマンガが何であるのか気がついたようだった。
そしてさらに静かになった会場に向かって、感情MAXで朗読を続ける。
「病院を出たとき、かすかに東の空が白んではいたが、頭の上はまだ一面の星空だった。
この広い宇宙のかたすみに、僕の血をうけついだ生命がいま、生まれたんだ。そう思うと、むやみに感動しちゃって。涙がとまらなかったよ。
それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日びの思い出こそ、きみからの最高のおくり物だったんだよ。少しぐらいさびしくても、思い出があたためてくれるさ。そんなこと気にかけなくていいんだよ」そしてマンガを閉じると高砂に向き直り、こう声をかけた。
「島田、アニメ好きのお前ならわかってると思うけど、これは『ドラえもん のび太の結婚前夜』の、お父さんと静香ちゃんの結婚前夜の会話だ。きっと今日の日を、新婦の久美さんとご両親はこんな気持ちで迎えたんだと思う。責任はとんでもなく重いけど、しっかりと頑張ってくれ」
島田はすでに、顔を真っ赤にして涙を堪えている。昔から涙もろいやつだったが、相変わらずチョロいやつだ。
そして新婦さんの方に向き直り、続けた。
「久美さん、実は静香ちゃんのお父さんは結婚に迷う彼女の背中を、こんな言葉で最後に一押しします。もう少し聞いて下さい」
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね。かれなら、まちがいなくきみを幸せにしてくれるとぼくは信じているよ」
「久美さん、島田は昔からのび太のように鈍くさいやつでしたが、この通りの人間です。10年以上も一緒にいる、私の自慢の親友です。至らないやつですが、どうか宜しくお願いします!本日は誠におめでとうございました!」
実に、スピーチの9割がたをドラえもんの朗読で逃げ切った。さすがにやり過ぎたかと少し後ろめたい思いだったが、この後に意外なことが起きる。
大きな拍手を頂くと新婦のご両親が席に来られ、「心から感動しました、ありがとうございました」と仰って頂く。
さらにビールを注いで頂き歓談していると、新郎新婦の主賓や招待者から次々に名刺交換を求められ、退出の際には島田から改めて、涙ながらにお礼を伝えられた。
このあと、ドラえもんと、美味しいメシについて、いろいろとこじつけている文章が続くんだけども、全く、心に刺さらない。ドラえもんのエピソードを読んだ時点で時間が止まっているから。
そして、慌てて、ドラえもんの映画を検索しまくりました。
ああ、子供たちが結婚をするとしたら、その前日に見たい映画ですね。今の時代、結婚がそんな重いものではなくなっていることは理解していますが、やっぱり、こんな気持ちになるんだろうな、と思います。