- 2011/08/14
北北西に進路を取れ、今見ても、ドキドキする傑作です。さすが、古典は面白いです。
高校の時の漢文の先生が、古典を読めば間違いと言っていたのを思い出しました。古典は長い年月をかけて淘汰……
何がいいのか全くわかりませんでした。
テンポもキレもないので、終始、なんだかなぁ、と思いながら見ていました。
世界的な画家、田村修三の展覧会で大事件が起きた。展示作品のひとつが贋作だとわかったのだ。連日、報道が加熱する中、北海道で全身に刺青の入った女の死体が発見される。このふたつの事件の間に浮かび上がった男。それは、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、ある事件を機に人々の前から姿を消した津山竜次だった。かつての竜次の恋人で、現在は田村の妻・安奈は北海道へ向かう。もう会うことはないと思っていた竜次と安奈は小樽で再会を果たす。しかし、病は竜次の身体を蝕んでいた。残り少ない時間の中で彼は何を描くのか?何を思うのか?彼が秘めていた想いとは?
原作・脚本:倉本聰 監督:若松節朗/主演:本木雅弘、小泉今日子
軸 | 内容 |
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導入 | 世界的画家・田村修三の回顧展で〈一点が贋作〉と判明。同時期、北海道・小樽で女性の変死体が見つかる。映画.com |
鍵を握る男 | 二つの事件を結ぶ名前は――かつて“天才”と称されながら業界から消えた画家 津山竜次(本木雅弘)。 |
再会 | 竜次の元恋人で今は田村の妻となった安奈(小泉今日子)は真相を求め小樽へ。 疎外と執念を抱え生きる竜次と再び向き合う。 |
サスペンスと美 | 贋作騒動を追う美術鑑定家、竜次を陰で操るフィクサー、刺青の女――“美とは何か”“創作者の業とは何か”を問う人間模様が交錯し、物語は静かな海の底へ沈み込む。 |
テーマ:真贋/芸術家の狂気と贖罪/愛と時間の不可逆性
総評
映像と俳優陣は高評価。
一方で「情報量に対し尺が足りず、人物背景が想像頼み」「芸術論が重く共感しにくい」と賛否がくっきり分かれる“通好み”の一本。
4K撮影×狭額フレーミング
– 美術品と小樽の港景を“絵画のよう”に固定アングルで切り取る演出。
本木雅弘の彫刻的ボディ言語
– 台詞より視線と手の動きで狂気と孤独を表現し「おくりびと以来の当たり役」と絶賛。
贋作事件と刺青の女が示す“二重の皮膚”
– 絵の表層と肌の下、双方に潜む真実――倉本聰ならではの寓意が好事家に響く。
刺さる | 刺さらない |
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✔ 芸術家の“業”映画が好き ✔ 余白多めの会話劇を咀嚼したい ✔ 北国ロケの静かな映像美が好物 |
✘ 明快なカタルシス必須 ✘ 長い説明や背景描写が無いとモヤモヤする人 |
推しタイトル | 共通点/推しポイント |
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『モリのいる場所』(2018, 沢田研二/樹木希林) | 引退画家の“動かない庭”で繰り広げる静かな人間賛歌。芸術と老いをユーモアで描く。 |
『At Eternity’s Gate』(2018) | 画家ゴッホの心象風景を主観カメラで映す。創作と狂気の境目に踏み込む点が近い。 |
『Mr. Turner/光に愛された男』(2014) | 英風景画家ターナーの執念と孤独を淡々と追う傑作。美術を語る“重さ”が好相性。 |
『永い言い訳』(2016, 西川美和) | 喪失を抱えた男が狭い人間関係の中で再生を模索。心情描写のリアルさが共鳴。 |
『美術館を手玉にとった男』(2014, ドキュメンタリー) | 贋作事件のドキュメント。真贋と価値の揺らぎを実話で堀り下げる。 |
『海の沈黙』は――
贋作事件を軸に、“美と真実”を問いかける静謐な心理サスペンス。映像と演技に酔える一方、語られない空白をどう感じるかで評価が真っ二つに割れる“大人向け”の一編。
静かな海に耳を澄ませたい夜、ぜひ。