- 2020/02/08
最高の人生のはじめ方、ちっとも共感することができませんでした。ただ、のっぺりした映画という印象です。
メリハリもなくつまらない映画。途中で、飽きちゃいました。 柳の下にはどじょうは二匹いなかった、という……
ルポを題材に二重構造になっている設定は面白いんですけど、ミステリーそのものが薄めなんで、それほどとは思いませんでした。
映像作家でもある著者・長江俊和のもとに、“訳あり原稿”が届く。タイトルは**「カミュの刺客」、書き手はフリーライター若橋呉成**。中身は、有名ドキュメンタリー作家・熊切と心中を図り自分だけ生き残った女性・新藤七緒への独占インタビュー記録だ。山荘、心中の一部始終を撮ったビデオ、そして「なぜ女だけが生き残ったのか」という違和感……。原稿を読む“長江”の視点と、取材の逐語記録が絡み合い、事件は二転三転していく――。
小説の作りは、長江自身が得意とするフェイク(モ)ドキュメンタリー手法の応用。現実味のある“資料”と“証言”を積み上げながら、読者の確信を何度も裏切る設計です。シリーズ累計は30万部超。
“語り手は信頼できるのか?”を最後まで揺さぶる構成
ルポ原稿と著者注記が“編集された真実”を作ることで、読者は常に足場を崩されます。
「カミュ(神湯)」という黒い影
政界の大物“神湯”にまつわる噂――「カミュの刺客」の存在が、事件の周縁をじわじわ濁らせる。誰が“刺客”なのかという読みは本作の主要テーマの一つ。
再読を誘う言語遊戯
ネット考察では、登場人物名にアナグラム的な仕掛けがあると指摘され、読み直しで腑に落ちるヒントが散らばっていると話題に。
ポジティブ(多い)
「深読み/二度読みマストの構造」「どんでん返しが鮮やか」――登録・感想が多い読書コミュニティでも“再読したくなるミステリ”として受け止められている。
モキュメンタリー手法を小説に移植したユニークさが評価され、臨場感のある“取材記録”を読む感覚がクセになる。
引っかかり/賛否(ときどき)
“カミュ”とは誰かの解釈が割れる(政治家“神湯”説など)。意図的な曖昧さを「余韻」と見るか「説明不足」と見るかで評価が分かれる。
終盤の解釈依存(読者に委ねる部分)が強く、「論理の飛躍に感じる」か「読後に考え続けられて良い」かで好みが割れる。各種ネタバレ考察が盛ん。
参考:文庫版公式紹介や小売ページも“二度読み”を前提に推しており、読書メーターでも登録数5,000件超と反響が大きい。
「カミュの刺客」の主語は固定されない可能性がある――“誰かの代理人/装置”という概念として読めば、作中の複数の人物・行為が重なって見えてくる。
人名や言い回しに暗号的な遊びが入っているとする読者解釈も(例:若橋呉成のアナグラム説)。正史の“事件史”と“語りの編集”のズレが肝。
同シリーズの新作『出版禁止 女優 真里亜』(2025/4/16 新潮社)は、呪いの映画企画に挑む女優を追う“ルポ”という体裁で展開。シリーズの読み味(取材録×虚実の撹拌)をそのまま拡張しています。
作品 | どこが似ているか |
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『掲載禁止』(長江俊和) | 同作者の“記録もの”体裁の姉妹作。手法の妙と解釈遊びが好きなら鉄板。 |
『白ゆき姫殺人事件』(湊かなえ) | 証言や記事・SNSを積層して真相に迫る“ドキュメント型”ミステリ。群衆の噂が真実を歪ませる怖さが共通。 |
『告白』(湊かなえ) | “語り”が読者の視点を翻弄するタイプ。道徳観の揺さぶりと語りの罠が近い(※代表作として)。 |
『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ) | 再読前提の叙述トリック。読後に世界が反転する快感をもう一度。 |
『火のないところに煙は』(芦沢央) | 実話風エピソードを積んで“語られ方”の怖さを描く短篇連作。モキュメンタリー的な余韻。 |
『出版禁止』は、“取材記録を読む面白さ”と“語りの罠”で読者を翻弄するフェイク・ドキュメンタリー仕立てのミステリ。
解釈で盛り上がれる一冊なので、読後に考察記事を漁る楽しみまで含めてどうぞ。