出版禁止、面白い試みだとは思ったけど、ミステリーとしては、それほどでもなかったです。

出版禁止、面白い試みだとは思ったけど、ミステリーとしては、それほどでもなかったです。

ルポを題材に二重構造になっている設定は面白いんですけど、ミステリーそのものが薄めなんで、それほどとは思いませんでした。

 

著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101207410/

どんな話?(ネタバレなしのあらすじ)

  • 映像作家でもある著者・長江俊和のもとに、“訳あり原稿”が届く。タイトルは**「カミュの刺客」、書き手はフリーライター若橋呉成**。中身は、有名ドキュメンタリー作家・熊切と心中を図り自分だけ生き残った女性・新藤七緒への独占インタビュー記録だ。山荘心中の一部始終を撮ったビデオ、そして「なぜ女だけが生き残ったのか」という違和感……。原稿を読む“長江”の視点と、取材の逐語記録が絡み合い、事件は二転三転していく――。

  • 小説の作りは、長江自身が得意とするフェイク(モ)ドキュメンタリー手法の応用。現実味のある“資料”と“証言”を積み上げながら、読者の確信を何度も裏切る設計です。シリーズ累計は30万部超。


作品の読みどころ・仕掛け

  • “語り手は信頼できるのか?”を最後まで揺さぶる構成
    ルポ原稿と著者注記が“編集された真実”を作ることで、読者は常に足場を崩されます。

  • 「カミュ(神湯)」という黒い影
    政界の大物“神湯”にまつわる噂――「カミュの刺客」の存在が、事件の周縁をじわじわ濁らせる。誰が“刺客”なのかという読みは本作の主要テーマの一つ。

  • 再読を誘う言語遊戯
    ネット考察では、登場人物名にアナグラム的な仕掛けがあると指摘され、読み直しで腑に落ちるヒントが散らばっていると話題に。


ネットでの評判(ざっくり傾向)

ポジティブ(多い)

  • 深読み/二度読みマストの構造」「どんでん返しが鮮やか」――登録・感想が多い読書コミュニティでも“再読したくなるミステリ”として受け止められている。

  • モキュメンタリー手法を小説に移植したユニークさが評価され、臨場感のある“取材記録”を読む感覚がクセになる。

引っかかり/賛否(ときどき)

  • “カミュ”とは誰かの解釈が割れる(政治家“神湯”説など)。意図的な曖昧さを「余韻」と見るか「説明不足」と見るかで評価が分かれる。

  • 終盤の解釈依存(読者に委ねる部分)が強く、「論理の飛躍に感じる」か「読後に考え続けられて良い」かで好みが割れる。各種ネタバレ考察が盛ん。

参考:文庫版公式紹介や小売ページも“二度読み”を前提に推しており、読書メーターでも登録数5,000件超と反響が大きい。


もう一歩踏み込んだ“軽い”考察(最小限のネタバレ示唆)

  • カミュの刺客」の主語は固定されない可能性がある――“誰かの代理人/装置”という概念として読めば、作中の複数の人物・行為が重なって見えてくる。

  • 人名や言い回しに暗号的な遊びが入っているとする読者解釈も(例:若橋呉成のアナグラム説)。正史の“事件史”と“語りの編集”のズレが肝。


近作情報(シリーズ)

  • 同シリーズの新作『出版禁止 女優 真里亜』(2025/4/16 新潮社)は、呪いの映画企画に挑む女優を追う“ルポ”という体裁で展開。シリーズの読み味(取材録×虚実の撹拌)をそのまま拡張しています。


『出版禁止』が刺さった人におすすめ(テイスト別)

作品 どこが似ているか
『掲載禁止』(長江俊和) 同作者の“記録もの”体裁の姉妹作。手法の妙と解釈遊びが好きなら鉄板。
『白ゆき姫殺人事件』(湊かなえ) 証言や記事・SNSを積層して真相に迫る“ドキュメント型”ミステリ。群衆の噂が真実を歪ませる怖さが共通。
『告白』(湊かなえ) “語り”が読者の視点を翻弄するタイプ。道徳観の揺さぶりと語りの罠が近い(※代表作として)。
『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ) 再読前提の叙述トリック。読後に世界が反転する快感をもう一度。
『火のないところに煙は』(芦沢央) 実話風エピソードを積んで“語られ方”の怖さを描く短篇連作。モキュメンタリー的な余韻。

ひと口まとめ

『出版禁止』は、“取材記録を読む面白さ”と“語りの罠”で読者を翻弄するフェイク・ドキュメンタリー仕立てのミステリ。
解釈で盛り上がれる一冊なので、読後に考察記事を漁る楽しみまで含めてどうぞ。