変革を好む人と、変革を好まない人がいるのは、よくわかるし、当然のことです。
それが1割と9割というのも、感覚的に、そんな感じなんだろうなとも思います。
そして、変革を好まない9割の中に、異端児の1割を応援してくれる人が、たまーにいるというのもその通りでしょう。
でも、私がイライラするのは、変革を好まない9割の中で、「自分は変革が好きだ」と言いつつ、いざというときになると、変革の対極の行動を掌を返したようにするヤツですね。
えっ、変革、嫌いだったんじゃん。だったら、好きなフリするなよ、無駄に期待するから。ってやつです。
これ、多いと思うけどな。どうなんだろう。
夏野剛氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
私はまさに典型的な異端児だと思いますが、ドコモの中にガーディアン、すなわち庇護(ひご)者がいたということが大きいです。大企業の中で変革、イノベーションを起こそうとすると、既存の組織との摩擦が絶対に起こります。当時の経営トップが、私たちがやることに対して「いいじゃねえか、やらせてやれ」と言うから、かなり突っ込んで変革ができたのです。
ところがトップが変わると「摩擦を起こしているのはお前じゃないか」とはっきり言われましたね。摩擦を起こしている人間は問題児だ、と思うか、新しい可能性にトライしているんだと捉えるか。これに尽きます。
私に限らず、イノベーションを起こす人には、直属か斜め上の上司か、あるいは直属の上司を飛ばしたもう1段上にガーディアンがいるのです。(プレイステーションを企画した)久多良木健さんなら、(ソニー・ミュージックエンタテインメント出身でソニー・コンピュータエンタテインメントの経営を担った)丸山茂雄さんや(ソニー社長・会長を歴任した)大賀典雄さんがガーディアンでしょう。そのときの人の巡り合わせで決まってしまうのが、日本の大企業の悲劇だと思っています。
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イノベーションを本気で起こしたいと思っている人は1割というのは、米国でも欧州でも、たぶん一緒だと思います。ただ、残り9割のスタンスが「でも、その1割は偉いよね」と思うか、「その1割は秩序を乱す邪魔者だよね」と思うかに違いがある。米国は前者の価値観がベースにあるので、できれば現状維持をしたいと考える9割もイノベーターのガーディアンになるし、イノベーションを起こすためにはどうすればいいかという議論もします。
経営トップが誰であろうが、欧米の企業ではイノベーションが企業の生命線だと思われていますから、変革を好む1割を大事にしている。一方、日本の場合は変革を好まないトップだと、みんなで異端児を攻撃する。ここに違いがあります。
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尖れるとすれば、それは自分が向いている仕事を見つけたとき。生まれつきイノベーティブかイノベーティブじゃないかということではなくて、この仕事では尖れないけど、あっちの仕事では尖れるというのはあるんです。転職も含めて、それを見つけるしかありません。
その上で、冒頭で話したように、ガーディアンを見つけるのがすごく大事です。直属の上司に理解がなければ、1個飛ばしてその上司の理解を得る。そうすれば、直属の上司は何も言いません。あるいは斜め、つまり上司の同僚や同期、同じ格で違う部署の管理職にサポートしてもらう。そうすると上司は「あっちの部署に持っていかれちゃったら困るな」と思うので、安全保障になりますよ(笑)。