AI vs. 教科書が読めない子どもたち、はとても読みやすくていい本。何がすごいって、著者の文章力がすごいです。

読解力が大切と主張するだけあって、とてもわかりやすい文章を書きます。内容よりも、まず、その文章のうまさにびっくりしました。素晴らしすぎ。弟子入りしたいぐらい。

中味もわかりやすいです。AIの現時点での限界点が、よくわかります。そして、かなりのお膳立てをして、AIの成果をアピールしているということも。

AIと人間の大きな違いは、長い生存競争の中、生き残ってきた本能があるかないかなんじゃないかなぁ、などと思ったりしました。AIを滅びさせるプログラムを作って、AI自身が滅びることを恐れるようになったら、人間を超える素養ができたと言えるのかもしれません。でも、そうなったら、あっという間に、人間は滅びそうですけど。

先日惜しまれつつ世を去ったホーキング博士は、数年前に「完全な人工知能(AI)が実現すれば、人類は終焉を迎える」という意の発言をしていた。いわゆる「シンギュラリティ」、つまりAIの進化が人間のそれを上回るという「技術的特異点」のことだ。
しかし、東大合格を目指した「東ロボくん」の開発者である著者は言う。「AIが人類を滅ぼす?……滅ぼしません! 」「シンギュラリティが到来する?……到来しません! 」。それどころか、東大合格すらAIには無理だろうと言うのだ。
とはいえ、個人的にあまり笑っていられない。「東ロボくん」は既に私の勤める大学の入試は十分に突破する偏差値を模試で叩き出している。では、MARCHレベルと東大との入試の間に、AIが決して越すことのできないどのような溝があるというのか。
それは国語、読解力だ。AIが自然言語を読みこなすことは金輪際できないというのだ。その不可能性の仕組みは本書にあたってもらいたいが、ここでほっと胸を撫でおろすのも束の間、シンギュラリティよりもっと切迫した問題があった。
実は中高生の多くが、「東ロボくん」以下の読解力しか持っていないということが調査から浮かび上がってきた。二つの文章の意味が同じかどうかを判定する問題で、中学生の正答率はなんと57%。しかも、それを聞いたある新聞記者が、57%もあるなら悪くないんじゃないかと言ったそうで、もうこうなると日本人の読解力は壊滅的と言わざるを得ない。二択の問題なら誰でも五割はとれる。
他のタイプの問題でも、サイコロを転がすのと同じ程度の正答率しかなかったというこの若者の読解力の現状で、小学校からプログラミングや英語が導入されようとしているが、著者は言う。「一に読解、二に読解」と。そうしなければ、AIの進化を待たずに人間が職場をAIに明け渡さねばならなくなる日が遠からず訪れることになるだろう。