- 2020/05/28
三度目の殺人。冒頭から睡魔が襲ってきて、ほとんどストーリーのわからぬまま終わりました。
役所広司の演技というか、余韻を残した終わり方とかが、多くの人から良いと思われているのかもしれませんが……
冒頭で、この本の内容をそのまま受け入れるぐらいなら読まないほうがいいというスタンスもいいし、私の大好きな芥川龍之介の侏儒の言葉を引用しているのもいいですね。
もしかしたら、侏儒の言葉と似ているから共感できたんでしょうか。現代版侏儒の言葉と言っても差し支えないかもしれません。
そして、北野武の態度がニュートラルで押しつけがましくないところや、すごく平易な文章なのもいいんでしょうね。
二〇一八年、道徳を教科化? だけど、その前に……、
『日本人にとって、「道徳」とは何か?』
この問いに答えられる、親や教師はいるのだろうか。
まず最初に大人たちが、真面目に考えた方がいい。稀代の天才が現代の核心をえぐる、未だ嘗てない道徳論!
「時代を作る人は、いつだって古い道徳を打ち壊してきた。誰かに押しつけられた道徳ではなく、自分なりの道徳で生きた方がよほど格好いい。
自分なりの道徳とはつまり、自分がどう生きるかという原則だ。
今の大人たちの性根が据わっていないのは、道徳を人まかせにしているからだ。それは、自分の人生を人まかせにするってことだと思う」【内容】
第一章 道徳はツッコミ放題
時代が変われば、道徳も変わる/これから人生が始まる小学生に自分を見つめさせて、なんの意味があるのか/人の心の優しさにつけ込む詐欺師は、とても道徳的に見える/道徳は人間のもの。サルだのクマだのに語らせてはいけない/ほか第二章 ウサギはカメの相手なんかしない
現代では、ウサギは競走中に昼寝しないし、そもそもカメなんて眼中にない/インターネットで馬鹿が利口になるわけじゃない/現代は、人間関係がゼロでも生きられる時代/数字で見れば、明らかに社会のモラルは向上している/ほか第三章 原始人に道徳の心はあったか
氷河期に突入した7万年前、道徳の卵が生まれた!?/金持ちよりも、貧乏人の親の方が、子どもを厳しく躾ける/誰かに押し付けられた道徳に、唯々諾々と従うとバカを見る/勤勉や勤労が道徳なのは、いったい誰のためなのか/ほか第四章 道徳は自分で作る
昔ながらの精神主義は、働きアリを作るには都合がいい/俺たちに断りもなく、どこの誰が、現在の道徳を決めたのか/友だちが一人もいなくなって、幸せに生きてる奴はたくさんいる/大学を辞めるまでの俺は、母親の道徳観の中で生きていた/ほか第五章 人類は道徳的に堕落したのか?
さまざまな宗教を取り入れる日本人の知恵を世界に広めよう/食い物とは、他の生きものの「命」だ/環境破壊の問題も、要するに人間が道徳を忘れたから起きた/これから先は、個人の道徳より、人間全体の道徳がずっと大切になる/ほか
芥川龍之介の侏儒の言葉も一緒に読みたいですね。
道徳は便宜の異名である。「左側通行」と似たものである。
道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。
道徳の与えたる損害は完全なる良心の麻痺である。みだりに道徳に反するものは経済の念に乏しいものである。
みだりに道徳に屈するものは臆病者か怠けものである。強者は道徳を蹂躙するであろう。弱者はまた道徳に愛撫されるだろう。道徳の迫害を受けるのは常に強弱の中間者である。
良心とは厳粛なる趣味である。
良心は道徳を造るかもしれぬ。しかし道徳はいまだかつて、良心の良の字も造ったことはない。
我々の行為を決するものは善でもなければ悪でもない。ただ我々の好悪である。
あるいは我々の快不快である。そうとしかわたしには考えられない。
ではなぜ我々は極寒の天にも、まさに溺れんとする幼児を見る時、進んで水に入るのであるか?
救うことを快とするからである。
では水に入る不快を避け、幼児を救う快を取るのは何の尺度に依ったのであろう?
より大きい快を選んだのである。