大局観について考えてみました。羽生善治も歳をとったら、「読み」よりも「大局観」と言っていますし。

大局観について考えてみました。羽生善治も歳をとったら、「読み」よりも「大局観」と言っていますし。

歳をとると、深く読む力が落ちてきます。脳みそのスペックが徐々に落ちている感じです。なので、ショートカットして結論を出さないと、なかなかうまくいきません。

小さい頃から「読み」と「大局観」の両方を考えていましたが、30歳を過ぎてから、大局観の比重は高くなっています。記憶や計算といった部分が得意な20歳前半頃までは読みが中心。年齢が上がってくると、経験値を積む中で大局観が磨かれていくこともあって、だんだん感覚的な要素の比率が上がっていきました。

http://media.lifenet-seimei.co.jp/2017/02/07/9077/

羽生さんだって、だいたいそんな感じのことを言っていますし。

 

 

そこで、私がどう考えて、将棋を指しているかを記録しておこうと思いました。もし、役に立つなら、最近、伸び悩んでいる長男にも伝えてあげたいです。

  • 自分の予想通りの手を指す相手は格下
    • 相手の指す手が予想でき、その通りに来る相手の棋力は、自分以下であることがほとんどです。ポカを防ぐようにしましょう。
    • 逆に、予想外の手で来る相手は危ないので、予想外の手が来たときは、しっかり考えることにしています。
    • 相手が弱すぎて、単なる悪手の場合でも、罠があるかどうか念のため考えることにしています。「獅子は小虫を食わんとてもまず勢いをなす」というやつですね。
    • 裏返しの戦術として、わざと相手が予想していないだろうと思う微妙な手を選択するのも効果的です。特に形勢が不利なときには。
      • 予想していない手かどうかを判断するには、こっそり、相手の顔を見ます。重要なのは視線で、盤面のどこを見ているかとで攻め重視か守り重視かは何となくわかります。
      • 子どもに顕著ですが、指した後に、こちらをチラッと見る場合、形勢に自信を持っているときが多いです。このときに、予想外の手が効果的です。
  • 駒得しながら攻めていれば安心
    • 攻めながら駒得できている場合は、最後にもつれても、妙手や好手があることが多いので、読み切れなくても踏み込んでも大丈夫と言い聞かせて、果敢に攻めることにしています。
    • 逆に、駒損している場合は、最後の最後で相手側に良い手がある場合が多いので、慎重にしたほうがいいと思います。
      • 相手の攻めを待ち、駒を取るまで、開戦を控えることも意識しています。
      • 序盤は駒得しながら攻めることができるような準備をする期間という定義をしてもいいぐらいです。
    • 森下卓九段の「駒得は裏切らない」というのには共感できます。どうせ、読んでもわからないのなら、駒損にならない限り、迷ったら取るを実践しています。
  • 「決めに行く手」を3手連続で続けない
    • 決めに行って、大技が決まり、勝つと気分は最高です。が、実力伯仲の場合、そんなに簡単に技が決まらないことが多く、ねじり合いになることが多いです。そんな状況で、決めに行く手を繰り返すと、脇が甘くなり、反撃が厳しく一気に形勢不利になることが多いので、決めに行って、決まらなかったら、いったん「負けにくい手」「深慮遠謀がありそうな手」を混ぜるようにしています。
      • ちなみに、負けにくい手とは、自陣のキズを解消し、相手の攻めを未然に防ぐ手と、駒得を目指す手と定義しています。深慮遠謀がありそうな手は、攻めにも守りにも直接的な関係が薄い手で、相手が迷う「まやかし」の手の総称です。
      • あまり考えたことはないですが、「負けにくい手」を3手連続で続けないというのも重要かもしれません。「負けにくい手」を続けているときって、若干有利だと思って、ビビっている傾向が強いので。
      • 野球のピッチャーで言うと、直球ばかりじゃなくて、変化球やボール球を混ぜて組み立てよう、って話ですね。一本調子になると、深く読んでいるほうが勝つので、ちょっと辛い感じです。
    • 逆に、相手が決めに来たら、徹底的に粘るのか(主に、駒得して受けることができるとき)、唐突に反撃するのか(主に、駒損しながら受けにまわらざるを得ないとき)、相手の予想を外すことを考えながら、選択するようにしています。予想を外すのは重要です。
  • 15手後に玉がどこにいる確率が高いかをイメージする
    • お互いが攻めたとき、玉将がどこにいるかを予想して、「深慮遠謀がありそうな手」を指すタイミングで、未来の玉将に位置に駒の効きを集めておくことを意識しています。
    • 飛車角の大駒や、桂香の跳び道具をうまく使うことを考えるようにしています。30手前に自陣に打った香車の効果で詰んだなんて、よだれが出るほど、嬉しいです。
    • 遊び駒の活用も現在の戦場に駆け付けられるかどうかよりも、今後の戦場に駆け付けられるかを考えるようにしています。なぜなら、現在の戦場には駆け付けられないから遊び駒なわけですから。
    • 穴熊には通用しないので、つまらないですね。ということは個別に穴熊対策は必要なのかもしれません。
  • 失敗しても、取り返そうとしない
    • 悪手をしてしまい、一番、良くないのは、悪手を重ねることです。
    • そして、悪手を重ねる原因は、ミスに動揺して、そのミスを取り返そうとすることが最も多いというのが私の経験則です。
    • なので、悪手を指してしまったら、落ち着いて、「負けにくい手」「深慮遠謀がありそうな手」で気分を落ち着かせることにしています。悪手して逆風状態のときに、技を決めようとしても決まらないからです。

まあ、子どもにつき合って、将棋を再び始めたけど、昔と違って、全然、勝てずに「老い」に対する絶望感の中、考え方を買えました。
基本的な戦略を決めて、その戦略から導き出される選択肢を絞り込んで、深く読んでみて明らかに悪くなる手を除外し、選択肢に残った手を深く考えずに指すようにしてみたら、半年で3級昇級したので、平凡なアマチュアにとっては、それなりに効果的な大局観じゃないでしょうか。相変わらず詰め将棋は解けないのですが、逆転勝ちは増えました。

 

いずれ、ディープラーニングで得た大局観を自然言語で説明するようになれば、もっと素晴らしい、誰でも真似が可能な大局観の説明が出てくるかもしれませんが、必ずミスをする対人間の勝負ということでは、上記の経験則は、結構、的を射ているんじゃないかな、と思っています。

長男のためにと思って、言語化してみたたのですが、これってよくよく考えるとビジネスでも同じかもしれません。いい気づきになりました。