大崎善生の「将棋の子」は、いろいろと考えさせられる素晴らしい本です。人生の節目に読んで欲しい本です。

「聖の青春」は、乱暴に分類すると闘病モノなので、感動するのが約束されたテーマだし、村山聖という天才の強烈な個性のおかげで作品が成り立っている部分もあると思います。

それに比べて、「将棋の子」は、すごくリアルでいいです。才能のある若者が、夢と期待を自信を持って、挑戦するけれども、全国から集まってきた同じような子たちの中に入ると、埋もれてしまうというのはよくあることです。

レベルは違うけれども、地元では神童と呼ばれていたけれども、中学受験した結果、進学校では平凡な子になってしまうのと同じような感覚でしょうか。あっ、プロ野球の戦力外通告に似ているかもしれませんね。

まあ、とにかく、身近で起きていることなんですよね。だから、自分のこととして、考えさせられます。村山聖じゃないですから。

奨励会……。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る”トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の1冊。第23回講談社ノンフィクション賞受賞作(講談社文庫)

と前置きが長くなりました。疲れてきたので、あとは箇条書きにします。

  • 何かに打ち込んだこと、何かで結果を出したことは自信につながります。子どもには、そういう経験をさせてあげたいです。
    →「将棋が今でも自分の自信なんだ。子供の頃から夢中になって指してて、大人にも負けないくらい将棋が強かった。それがね、そのことがね、今でも自分に自信をくれているんだ」という発言に共感です。
    →とは言え、親としては、子どもを極端な世界にのめり込ませるのは、勇気がいることではありますが。
  • 自分のやり方、成功体験にこだわっている人間は成功をつかみ損ねる気がします。
    →成田英二は終盤の強さに頼り、序盤をおろそかにしてしまったのと、村山聖は終盤だけだと勝てないと認識し、序盤も研究するようになったのとの違いに大きな差があったんだと思います。
  • やっぱり、ある一定の歳を超えたら親は子離れしないとダメでしょう。
    →子どもを溺愛するあまり、勝負に勝てない体質にしちゃった気がします。子どものことを考えたら、親は我慢して突き放すことも必要です。親の喜ぶ顔を見たさにやっているというのでは、最後の最後で踏みとどまれないんじゃないでしょうか。
  • 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、だと思います。
    →奨励会を勝ち抜いた者とそうではなかった者の差を分けたものは何だったのかは、よくわかりませんが、勝てなかったのには、やっぱり理由があると思います。

最後に、ただ1つ著者と意見が異なるのが三段リーグのくだりです。三段リーグが厳しすぎて、才能がアマチュアに流出していると書いていて批判的ですが、流出してでも狭き門にしておくことが、高いレベルを維持するためには有効だと思います。もし、ゆるくしても、プロになってから淘汰の対象となるだけだからです。

漫画にもなっているみたいです。