卒業ホームランが良かったので、調べたら、連ドラの原作になった流星ワゴンを読みました。
凄く良かったです。父と子の関係、親は子どものことを思っているけども、自分流で押し付けるので、そこから生まれる軋轢、すれ違い。しかも、離婚、リストラという、現代でありがちな問題。他人事とは思えませんでした。
これから来るであろう長男の反抗期に向けて、なんだか切ない気持ちでした。親の気持ちはなかなかわからないんだろうな、と思ったからでしょうか。かつ、父親をチュウさんと同じガンで亡くしたので、他人事でない気もしました。死ぬ前に流星ワゴンで出会えたらなどと無駄に想像してみちゃいました。父親の誕生日も近いですし。
個人的には、終わり方が何となく、しっくりきませんでした。
やっぱり、小説はカフカの変身のように、あり得ない設定の中で、人間の心の動きを描くのは鉄板ですね。
テレクラとか性描写がなければ、長女にも読ませたいのですが、ちょっと残念です。
主人公の永田一雄の前に、1台のワゴン車が止まったことからこの物語は始まる。ワゴン車には橋本義明・健太親子が乗っており、彼らはなぜか永田の抱えている問題をよく知っていた。
永田の家庭は崩壊寸前。妻の美代子はテレクラで男と不倫を重ね、息子の広樹は中学受験に失敗し家庭内暴力をふるう。永田自身も会社からリストラされ、小遣いほしさに、ガンで余命いくばくもない父親を訪ねていくようになっていた。「死にたい」と漠然と考えていたとき、永田は橋本親子に出会ったのだ。橋本は彼に、自分たちは死者だと告げると、「たいせつな場所」へ連れて行くといった。そして、まるでタイムマシーンのように、永田を過去へといざなう。
小説の設定は、冒頭から荒唐無稽である。幽霊がクルマを運転し、主人公たちと会話する。ワゴン車は過去と現在とを自由に往来できるし、死に際の父親が主人公と同年齢で登場し、ともに行動したりするのだ。
過去にさかのぼるたびに、永田は美代子や広樹がつまづいてしまったきっかけを知ることになる。何とかしなければと思いながらも、2人にうまく救いの手を差し伸べられない永田。小説の非現実的な設定と比べて、永田と家族のすれ違いと衝突の様子は、いたくシビアで生々しい。
永田は時空を越えて、苦しみながらも毅然と家族の問題解決に体当たりしていく。その結果はけっきょくのところ、家族が置かれた状況のささいな改善にとどまるだけでしかない。それでも死にたがっていた男は、その現実をしっかりと認識し生きていこうとする。「僕たちはここから始めるしかない」という言葉を胸に刻んで。(文月 達)
連ドラのほうもあります。