ふろむだ学習効率本、老化のせいか、なかなかアタマに入らないので、自分なりに整理してみました。とりあえず、2巻まで。

ふろむだ学習効率本、老化のせいか、なかなかアタマに入らないので、自分なりに整理してみました。とりあえず、2巻まで。
この記事は 19 分で読めます

昔はもっと記憶力があったのになぁ、と思いつつ、ただ本を読んだだけでは、何となくわかった気になるけど、あとで思い出そうとすると、細部はぼんやりしていて、何もわかっていないので、時間をかけて、まとめてみました。

黒字部分が、本に書いてあったことを要約したものです。もしかしたら、間違えて解釈しているかもしれませんが、あくまでも「自分メモ」なので、気づくまでは気にしないようにします。なお、青字は私の感想です。

 


第1巻


カーピキー2008実験 ・・・【勉強】と【テスト】のどちらが効率的か?

  • 定義: 【学習】=【勉強】+【テスト】
  • 実験: アメリカの大学生40人、スワヒリ語の単語、テスト結果の正誤は【フィードバック】しない。1週間後の結果を「全勉強全テスト」VS「弱点勉強全テスト」VS「全勉強弱点テスト」VS「弱点勉強弱点テスト」で比較
  • 結果: 「全テスト全勉強」=「全テスト弱点勉強」>>「弱点テスト全勉強」≒「弱点テスト弱点勉強」
  • 考察
    既に覚えたことの反復【勉強】は非効率的だが、既に覚えたことの反復【テスト】は効率的→何を反復するかが大事・・・それは【テスト】どのパターンも、自分がどれぐらい覚えていそうかの予測は同じぐらい→全問のテストを実施すると、意識していないが実力はついているということ学習にかかった時間で割り算して、学習効率を出すと、
    「全テスト弱点勉強」>>「全テスト全勉強」>「弱点テスト弱点勉強」>>「弱点テスト全勉強」
    理由: オーバーラーニング効果(実際は、オーバーテスティング効果)→難定着知識(=なかなか覚えられない単語)を定着させるのは難しく、差が出るのは忘却率のほうで、忘却を防ぐのは、オーバーテスティング

 

★知識の整理★

  • 既に覚えたことの【勉強】を反復するのは、めちゃくちゃ非効率。
  • 既に覚えたことの【テスト】を反復するのは、ものすごく効率が良い。
  • すでに覚えてしまった内容でも、繰り返し【テスト】すると、【忘れにくさ】が向上する。
    • ここでの【テスト】は文字通り、テストをするだけで、正解のフィードバックがないというのがポイントだと思います。やりっぱなしでも【テスト】が効率的というのは、結構、衝撃的な結果ではないでしょうか。
    • 【テスト】の効果は、「すでに知っていることを脳から取り出すから」なのか「答えはなんだろうと脳が考えるから」なのかという問いかけがありましたが、どちらでしょう?個人的には前者じゃないかと思っています。
    • 現実的な話をすると、勉強の基本パターンとしては、
       1.授業を聞く、または、テキストを読む
       2.テストを受ける
       3.間違えたところのテキストを読み直したり、テストの解答を理解する
      で、2と3を連続してやるというのが、良さそうです。まあ、フツーのやり方ですね。塾のカリキュラムもだいたいそうなっています。

 


第2巻


ポッツ実験 ・・・ 【勉強】する前に【テスト】をするとどうなるか?

  • 実験: 24人の英語話者、平均年齢26歳、バスク語を「勉強のみ」「記述テスト→勉強」「選択テスト→勉強」
  • 結果: 記述テスト勉強(91)>選択テスト勉強(88)>勉強(86)
    統計的な有意性はあるものの、効果の差はあまりない。かつ、時間で割り算すると学習効率は勉強のみのほうがいい。

 

★知識の整理★

  • 【勉強】をする前に【テスト】をすることで、効果は出るが、大きな差ではない。
  • 【テスト】は選択式よりも記述式のほうが、効果は高いが、統計的に有意とまで言えるかどうか微妙な差である。
  • 【テスト】には学習時間がかかるため、効率という面では、【勉強】する前に【テスト】をすることの効率は悪い。
    • そりゃそうでしょ、という結果ですね。全く何も知らない状態でテストを受けるのは意味がないですから。意味があるとすれば、今まで習った内容の積み重ねで解けるような問題の場合だけで、暗記系の教科では全く意味がないですね。なので、上記の通り、「講義→テスト→間違いの復習→テスト→間違いの復習→・・・」は黄金パターンだと思います。

 


 

中田2015実験 ・・・ 間隔の有無により学習効率どうなるか

  • 実験: 日本の大学生128人、20の英単語、テスト後のFBあり
    無間隔(勉強・テスト・勉強・テスト・勉強・テスト・勉強)と6分間隔(勉強・間隔・テスト・勉強・・・勉強)で比較
  • 結果: 無間隔>>6分間隔、ただし、1週間後のテストは、無間隔<6分間隔
    ここの間隔は、何をしていてもOK(リラックスしていてもいいし、他のことを忙しくしていてもいい)

中田&鈴木2018実験 ・・・ 間隔が長いか短いで学習効率はどうなるのか

  • 実験: 日本人の大学生133人、48個の英単語
    1分間隔(勉強・1分・テスト・勉強・・・勉強)と6分間隔(勉強・6分・テスト・勉強・・・勉強)
  • 結果: 学習フェーズでは、1分間隔>>6分間隔だが、1週間後では1分間隔<6分間隔であり、学習にかける時間もほぼ変わらず

 

★知識の整理★

  • 短い間隔(無間隔)で学習をすることは、新しい知識を獲得するのには有効
  • ただし、短い間隔(無間隔)で学習したものは、忘却率も高く、時間を置くて非効率であることが判明
    • これは、うすうすは分かっていたものの、すごい発見。一夜漬け(無間隔で1回ぽっきりモデル)をしても中長期的には意味がないということの根拠になるから。目の前の試験をクリアするためだけに勉強するのか、将来の試験や自分自身のために勉強するのかをよく考えないといけないと思いました。反省。

 

ついでに、もう1つ参考となる実験がありました。1分とか6分じゃなくて、もっと長い間隔の場合にどうなるのかという実験です。

バーリック1993実験 ・・・ 長いスパンでの学習効率はどうなっているのか

  • 実験: 博士の家族4人(英語のネイティブスピーカー)、フランス語もしくはドイツ語の単語300語
    14日間隔、28日間隔、56日間隔でセッション(ほぼカーピキーの弱点勉強弱点テストモデル)実施
  • 結果:
    直後→14日間隔>28日間隔>56日間隔、学習効率についても同様
    1年後→56日間隔>28日間隔>14日間隔、学習効率はどれもほぼ同じ効率
    5年後→56日間隔>28日間隔>14日間隔、学習効率についても同様(逆転)
  • 考察:間隔が長くなっても、「中田&鈴木2018実験」と同じということ。
    • この実験、何が驚きって、こんな実験を家族でやったということですね。博士はいいですけど、家族のほうはたまったもんじゃないです。でも、この結果は、すごく役に立つと思います。
    • でも、どうして、脳がこういう動きをするのかは謎ですね。短期的に何度も起きることは突発性の出来事のことが多いのに対して、長期的に起きることは未来永劫起き続けることという可能性が高いので、後者のほうを重要視するように遺伝子に組み込まれているんでしょうか。大昔のことを覚えていることが、生存競争に勝つために都合が良かったというのはあり得る話です。文字ができる以前の話になりますが。

★知識の整理★

  • 定着しにくい知識と、定着しやすい知識があるという仮説。
  • 定着しにくい知識を覚えようとすることは、非効率であり、弱点のみ勉強するという方式は、定着しにくい知識のみ覚えようとしているので、非効率という結果になるのではないか。
    • ということは、難しい問題を何度も解いても意味がない、ということなのか。簡単な問題を繰り返して解くことが効率的なのか。効率的だから、それで良いのかというわけではないでしょうし、なんか釈然としない感じが残ります。

 


 

コーネル2015実験・・・自分で答えを思い出したときと、思い出せなかったときの差異

  • 背景:【テスト】で正答を【思い出す】行為のモデルを以下のように定義
    →脳内を「探す」+脳から「取り出す」

    • カーピキー2008実験の【テスト】 探索○、取り出し○
      ポッツ実験の【テスト】 探索○、取り出し× ※初めて見た問題に対する解答を取り出すことは不可能だから。
    • 【テスト】のとき、正解した場合は、取り出すことができたと解釈し、不正解の場合は、他者から教えてもらったので、取り出すことができなかったと解釈する。
  • 実験1:アマゾン・メカニカルダルクで集められた20人、オンライン実施、英単語のペアを覚える。「書き写し」「書き写し」VS「書き写し」「歯抜け埋め」
    →「書き写し」は【勉強】、「歯抜け埋め」は【テスト】という位置づけ
  • 結果:
    学習フェーズの正解率→書き写し(98)≒歯抜け埋め(95)
    計測テストの正解率→書き写し(43)<歯抜け埋め(61)
  • 実験3a:
    「書き写し」「思い出し」「書き写し」VS「書き写し」「思い出し」「歯抜け埋め」
  • 結果:
    「思い出し」期間中は同じ(31)
    学習フェーズの正解率→書き写し(98)≒歯抜け埋め(95)以下は、「思い出し」で思い出せなかったものについて、
    計測テストの正解率→思い出せなかったものの書き写し(38)≒思い出せなかったものの歯抜け埋め(35)
  • 考察:論文タイトルの通り、「思い出そうとすることには学習効果があるが、実際に思い出せたかどうかは学習効果には関係ない 」ということ

 

★知識の整理★

  • 一定のラインを超えると思い出すことができ、超えないと思い出すことができないという【想起度】という概念を考えてみると、知識を以下のように分類できる。
    • 【未知】知識・・・知らない、習っていない知識、【想起度】ゼロ
    • 【不出】知識・・・習ったが、【想起度】が低く、思い出せない知識
    • 【可出】知識・・・【想起度】が十分に高く、思い出せる知識
  • 考察:
    • 【未知】知識に対する【テスト】+【フィードバック】は効率が悪い
    • 【不出】知識に対する【テスト】+【フィードバック】は効率が良い(コーネル2015で、カーピキー2008と同等だから)
    • 【可出】知識に対する【テスト】は効率が良い(カーピキー2008)

 

    • すごく、ざっくり言っちゃうと、できないことは【勉強】で、できることは【テスト】でということですね。これは、納得感あります。そもそもの話で言うと、できないことをできるためにすることを【勉強】と呼び、できることを確認することを【テスト】と呼んでいるとすら思います。
    • そういう意味だと、できない子どもにこそ、塾に通わせるべきなのかもしれません。

 


 

コーネル2009実験・・・覚える知識が複雑になった場合の扱い

  • 実験: アメリカの学生25人、質問文とその答えのペア(フィクションとノンフィクションの2種類がある)
    「【テスト】(質問のみ)+【勉強】(質問+答え)」VS「【勉強】(質問+答え)」
  • 結果:
    • ノンフィクションのとき、
      学習効果→「テスト勉強」(82)≒「勉強のみ」(77)
      学習効率→「テスト勉強」(41)<<「勉強のみ」(100)
    • フィクション
      学習効果→「テスト勉強」(41)>「勉強のみ」(31)
      学習効率→「テスト勉強」(51)<<「勉強のみ」(100)
  • 考察:
    【未知】の知識のテストは非効率、ポッツ実験と同様
    そして、学習の対象が単語じゃなくて、より複雑な文章問題であっても、同じ結果となり、単語での結果が、他の問題形式でも同じ結果になった。つまり、単語での学習の実験結果をその他の領域に応用できるということである。

 

カーピキー2011A実験・・・単語テストの結果とより高度なテストとの差異

  • 実験: パデュー大学の学生80人、ラッコに関する科学の文章
    「勉強1回」VS「(勉強+間隔)×4回」VS「勉強+コンセプトマップ」VS「(勉強+思い出し)×2回」
  • 結果1:
    学習効果(1週間後の計測テスト)→「思い出し」(66)>「4回勉強」(46)≒「コンセプトマップ」(42)>「1回勉強」(27)
    学習効率→「1回勉強」(235)>>「4回勉強」(100)≒「思い出し」(96)>「コンセプトマップ」(61)
  • 結果2:
    計測テストを単純な問題ではなく、知識を活用し、思考を組み立てられるかの【理解推論】テストにした場合
    学習効果→「思い出し」(69)>「4回勉強」(57)≒「コンセプトマップ」(55)>「1回勉強」(28)
    学習効率→「1回勉強」(195)>>「4回勉強」(100)>「思い出し」(81)>「コンセプトマップ」(64)
  • 考察
    【理解推論】テストの場合、「4回勉強」「コンセプトマップ」の結果が若干良くなっているものの、傾向としては単純なテストと同様
    学習効率という点においては、「1回勉強」が最も効率的だが、試験のように学習効率ではなく、学習効果を求める場合もあるので、「4回勉強」という手段もあながち間違っているわけではない

 


 

★知識の整理★

[学習効率についての比較表]

 【勉強】のみ   【テスト】のみ   【テスト】+【勉強】
【可出】 ×
カーピキー2008

カーピキー2008
コーネル2015 

【勉強】部分が非効率
【不出】
カーピキー2008
カーピキー2011A
×
正解がわからないから
【未知】同様と推定

カーピキー2008
コーネル2015
【未知】
カーピキー2011A
×
ポッツ

【テスト】部分が非効率
  • 【不出】の「◎+×=◎」となるのが、理論的に納得感がないものの、【テスト】+【勉強】には、相互作用が働き、その作用は【不出】のときに大きく、それ以外では無視できるほど小さいという考え方
  • 最強の学習方法は、
    【未知】が多い最初の段階では、【勉強】のみ
    【未知】【不出】【可出】が混在している段階になったら、【テスト】+【勉強】
    【可出】が大半を占めた段階では、【テスト】のみ
    というのが、最も効率的
    • 最強の学習方法については、同意です。っていうか、ある意味、あたりまえのやり方じゃないかな、と思います。塾のカリキュラムもそうなっていますよ。
    • ただし、この相互作用の考え方は、なんとなく、賛同できかねますね。なぜなら、美しくないから。【不出】の【テスト】+【勉強】は△であって欲しいです。そうすると、【可出】【不出】【未知】の3分類じゃなくて【可出】【不可出】の2分類になってすっきりするんですけど。もし、【不出】と【未知】の2つに差があるのであれば、【不出】の場合、脳細胞の中に、データは格納されているけれども、インデックスが貼られていない状態ということなんでしょうが、そうすると、脳は無限のキャパシティが必要であり、さすがに無理がある気がします。どこかで、データそのものを消すという行為をしているはずで、それまでの間、一時領域に溜めているというのが自然な気がします。一時領域のうち重要なもの、反復されるものが定着され【可出】になるというモデルです。なので、頭が良いと言われる人は、一時領域が大きい人か、データの消し方が上手な人なんじゃないかな、と思っています。
    • もう少し、脱線すると、【不出】知識の特徴って、ああ、あそこで間違えたんだけど、思い出せない、先生の表情まで覚えているのにぃ~、っていう感じの知識の周辺情報だけ覚えているという状態なんじゃないでしょうか。つまり、状況や感情などの周辺情報のほうが人間は記憶しやすくて、そこに結びついているかどうかが【不出】のポイントじゃないかと思っています。つまり、実際には何回も習っていても、周辺情報を覚えていないものは、【未知】と同じ動きをするんじゃないかな。データが完全に消えているので。

 

[学習効率モデル]

  • 【想起度】(=「思い出しやすさ」)・・・学習した分だけ【想起度】は増える、時間が経過した分だけ【想起度】は減る
    →【可出】と【不出】の割合で、【勉強】や【テスト】による学習効率が変化
    →【想起度】が高くなると、その後の学習効率は以下の理由で頭打ち:【可出】の割合が大きいことによる学習効率低下+【天井】に近いことによる学習効率低下
    →【想起度】が著しく上昇するケースとしては、【不出】語の割合が大きい、もしくは、相互作用の効果が加算
  • 【耐忘度】(=「忘れにくさ」)・・・【想起度】の上昇に伴い【耐忘度】も上昇するが、【想起度】が下がっても【耐忘度】は減少しない
    • 確かにモデルだから、事象をうまく説明できれば、それで良いのかもしれないけど、何となく納得感がないです。納得しにくい理由は、【耐忘度】というものが直感的にわかりにくいうえ、【耐忘度】がほとんど減少しないからです。「忘れにくさ」は上がる一方なのか、というとなんか違うような気がする・・・
    • と思ったけど、よくよく考えたら、【耐忘度】という表現が悪いだけで、脳への【累積刺激量】と考えれば、しっくりきます。【累積刺激量】が大きければ、脳内でシナプスが結合する確率が高くなり、長期記憶として定着しそう。そして、【可出】の知識よりも、【不出】の知識を学習したときのほうが、脳は刺激されそうです
  • 【耐忘度】を上げるのが学習効率を高める最良手段であり、【想起度】の上下に一喜一憂するのは効率的ではない
    →結論としては、学習効率=【耐忘度】の増分/学習時間ということ
    • これが、結論かぁ。【耐忘度】が【想起度】の上昇に影響されて上がるというメカニズムがやっぱり、しっくりこないです。
    • この結論から、できるだけ忘れた状態(=【想起度】が低く、大きく上昇する余地がある状態)で、再度、学習するのが効率的ってことになります。ドモホルンリンクルじゃないけど、忘れるまでじっと何もしないのが、学習効率を高めるコツ、みたいな。
    • でも、これは大問題です。なぜなら、多くの場合、学習のゴールには期限があるからです。学習効率が最大になるように、間隔を十分にあけていたら、試験日には間に合わない、ってことになってしまいますから!
    • とすると、一発長打(=【想起度】が低くなるまで待って、一気に【耐忘度】の値を高める)を狙う戦略よりも、単打(=【想起度】が低くなるのを待たずに、小刻みに【耐忘度】を上げる)でつなぐ戦略のほうが現実的な可能性もあると思いますが、どうでしょう。
    • 受験勉強は学習効率じゃなくて、学習効果ですから。学習効率の高い方法を実施するには、一定の待ち時間が必要だということだと使えないです。そもそも、効率の定義に、この待ち時間を学習効率の分母に算入したら、学習効率の結果も全然違うものになります。

 

[学習効率の表のブラッシュアップ]

  • 【耐忘度】をベースに知識を3つに分類してみると、
    • 【未知】知識=まだ学習していない知識。【耐忘度】はゼロ。
    • 【易忘】知識=学習して、ある程度の【耐忘度】はあるが、まだまだ【耐忘度】を上げる余地のある知識。
    • 【難忘】知識=【耐忘度】が十分に高く、それ以上学習しても、【耐忘度】をそれ以上上げる余地が少ない知識。
  • 【想起度】をベースに知識を3つに分類してみると、
    • 【未知】知識=まだ学習していない知識。【想起度】はゼロ。
    • 【不出】知識=学習したが、【想起ライン】を超えず、思い出せない知識。
    • 【可出】知識=学習し、【想起ライン】を超えていて、思い出せる知識。
  • 【想起度】×【耐忘度】での3×3のマトリックスを考え、あり得ないもの(例えば、【想起度】がゼロなのに【耐忘度】が高い、など)を除くと、知識は以下の4つの分類される。
    →【未知×未知】【不出×易忘】【可出×易忘】【可出×難忘】
  • これらの分類を先ほどの表に追加すると、以下の通り。
 【勉強】のみ   【テスト】のみ   【テスト】+【勉強】
【可出】
【難忘】
× × ×
【可出】
【易忘】
×  
【不出】
【易忘】
×
【未知】 ×
  • オーバーラーニング効果は、【可出×易忘】の知識に対して、何度も反復することで、【難忘】の知識に対して、何度も反復しても意味がない、ということ
    • これは、その通りです。現実を考えればわかります。例えば、大学生になって、1桁の四則演算を練習して、何か意味があるかということですから。ただし、計算のスピードを鍛えるとか別目的はあるかもしれません。
    • 【不出】と【可出】は、外から見えるので、判別が簡単なのですが、【難忘】と【易忘】は判別しにくいので、すでに【難忘】になっているか知識を学習から外すという行為の見極めが重要ですね。そして、学習を効率良くやるためには、できるだけ早くに【難忘】にステージアップして、学習の対象から外してやるということのような気がします。
    • が、ここで、【間隔】を空けることによる効率UPがジレンマとして存在しますね。悩ましい。

 


 

ここまでのまとめ

[2巻までに出てきた実験と超ざっくり結論一覧]

#諸条件がそれぞれあるものの、わかりやすくするために、敢えて詳細は抜いています。

  • カーピキー2008実験→【テスト】と【勉強】では【テスト】が効率的
  • ポッツ実験(2014)→【勉強】する前の【テスト】は効果なし、【選択テスト】と【記述テスト】の差は大きくはない
  • 中田2015実験→学習に【間隔】があったほうが効率的
  • 中田&鈴木2018実験→学習の【間隔】は長いほうが効率的
  • バーリック1993実験→年単位の長いスパンでも、学習の【間隔】は長いほうが効率的
  • コーネル2015実験→【思い出そう】という行為が学習には有効で、実際に思い出せたかどうかは関係ない
  • コーネル2009実験→より複雑な学習対象でも、単純な学習とほぼ同じ結果
  • カーピキー2011A実験→より複雑なテスト形式でも、単純なテスト形式とほぼ同じ結果

参考までに、これを年代順にソートすると、

  • バーリック1993実験→年単位の長いスパンでも、学習の【間隔】は長いほうが効率的
  • カーピキー2008実験→【テスト】と【勉強】では【テスト】が効率的
  • コーネル2009実験→より複雑な学習対象でも、単純な学習とほぼ同じ結果
  • カーピキー2011A実験→より複雑なテスト形式でも、単純なテスト形式とほぼ同じ結果
  • ポッツ実験(2014)→【勉強】する前の【テスト】は効果なし、【選択テスト】と【記述テスト】の差は大きくはない
  • コーネル2015実験→【思い出そう】という行為が学習には有効で、実際に思い出せたかどうかは関係ない
  • 中田2015実験→学習に【間隔】があったほうが効率的
  • 中田&鈴木2018実験→学習の【間隔】は長いほうが効率的
    • バーリック博士が、なぜ、この実験をしたのか、背景が知りたいところです。すごい先見の明があったような気がします。
    • 【間隔】については、結構、最近になって焦点が当てられたということですね。

 

[ここまでの感想]

    • これらの実験結果からすると、しっくりは来ないものの、【想起度】【耐忘度】のモデル、そして、【未知】【不出】【可出易忘】【難忘】という知識の分類は、矛盾なく説明できているように思います。
    • しっくりこない理由は、【想起度】【耐忘度】が説明するためだけの概念としか思えないからです。
    • 【想起度】に合わせて【耐忘度】が上がり、【耐忘度】は【想起度】より下がりにくいというのが、なんとも、しっくりこないんですよね。
    • 同じ理屈で、【テスト】と【勉強】に【相互作用】があるというのも、結果から作った感が満載で、納得感がありません。
    • 【想起度】【耐忘度】の概念はさておき、長い【間隔】で起きることを覚えておくことが、人類が生存競争で生き残るうえで有利だったというのは、その通りだと思います。
    • まあ、モデルというのは、すべてのファクトを論理的な矛盾なしに説明できれば良いということでしょうから、いったんは受け入れます。
    • いったん、モデルを受け入れたうえで、知りたいことは、【想起度】【耐忘度】の上昇や下降の仕方や、お互いの関係性の変数は、学習対象や学習方法によって異なるはずで、何がどう違うのかということです。【想起耐忘係数】が高い(=【耐忘度】を獲得しやすい)知識と【想起耐忘係数】が低い(=【耐忘度】を獲得しにくい)知識とでは、学習方法を変えるべきな気がしているので、気になります。ざっくり言うと、3文字の英単語を覚えるときの学習方法と、10文字以上の英語の学術用語を覚えるときの学習方法、同じでいいんだっけ、ということです。
    • それと、もう1つは、上にも書いている、一発長打(=【想起度】が低くなるまで待って、一気に【耐忘度】の値を高める)を狙う戦略よりも、単打(=【想起度】が低くなるのを待たずに、小刻みに【耐忘度】を上げる)でつなぐ戦略、ゴールに期限がある場合、どちらを選択しべきなのかということです。これは受験生にとって悩ましいはずです。
    • ちなみに、前者の【想起度】【耐忘度】については、脳への【累積刺激量】が【耐忘度】を上げるという仮説を考えています。たとえば、忘れたことを再度習うと、「あっ、忘れていた、やべえ」という意識が働き、ただ学習するよりも、脳がより刺激され、脳細胞のどこかに爪痕を残せるので、より忘れにくくなるのでは、という考え方です。
    • だから、記憶力の良い人は、学習対象そのものを覚えられる人というよりも、学習対象の周辺の事象(場合によっては、そのときの感情とか、そのときのシチュエーションとか、前後で起きたこととかも含む)をセットで脳にインプットできる人なんじゃないかな、と思います。例えてみると、【想起度】は学習対象を記憶する脳の領域の個人戦で、【耐忘度】は学習対象を記憶する脳の領域以外を含めた団体戦、という考え方です。脳のチームワークがある人が、記憶力がある人だし、なるべくチームで戦うことが、中長期的な脳の正しい使い方だと思いますが、どうでしょう???

 


 

第3巻以降につづく